建物賃貸借の問題① 自力救済の禁止

2020年4月17日

内田法律事務所は、つくば市・土浦市・牛久市等を中心に、建物賃貸借を巡る様々なトラブル(未払賃料の回収、契約解除、明渡請求、賃料の増減額請求など)に関するご相談に対応させていただいております。

建物賃貸借に関するご相談をお受けしていると、例えば
「賃借人が家賃を払わないから、賃貸借契約を解除したうえで、賃借人が部屋に入れないように鍵を交換してしまいたい。」
というようなご相談を頂くことがあります。

結論から申しますと、賃借人の承諾なく上記のような行動を取ることは、原則として許されていません。

自分の権利が侵害されている場合に、法の助けによらず、自力で侵害状態(家賃の滞納状態や用法違反の状態、契約解除後の不退去状態など)を解消しようとすることを『自力救済』といいます。
日本では、『自力救済』は原則として禁止されています。判例上、例外的に自力救済が許される場合が認められてはいますが、判例によると「私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」(最判昭和40年12月7日)とされており、極めて限定された場面しか例外が認められていないことが分かります。

違法な自力救済行為は、民法上の不法行為(民法709条)に該当しますので、例えば賃借人に無断で鍵を交換したり、勝手に室内に立ち入ったような場合は、賃借人のプライバシー権等を侵害したものとして損害賠償義務を課される場合があります。
また、行為の態様によっては、住居侵入罪(刑法130条前段)などの刑事事件にまで発展してしまう可能性もありますので、注意が必要です。

以上より、例えば賃借人が家賃を滞納しているからといって、また、賃貸借契約が有効に解除された後も賃借人が物件から退去しようとしないからといって、安易に鍵を交換する・室内に立ち入るなどの違法な自力救済に及んではいけません。
違法な自力救済を回避し、適法に滞納家賃の回収を実現したり、物件からの退去を実現するためには、民事訴訟や強制執行といった法律に則った手続を実行する必要があります。

建物の適法な明渡手続についての説明は、こちらをご覧ください。
→ https://uchida-tsukuba-law.com/375/

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