ハラスメントへの企業対応:セクシャルハラスメント(セクハラ)

2020年5月24日

ハラスメントとは、精神的・肉体的苦痛を与える行為又は職場環境を悪化させる行為をいいます。現在は、セクシャルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(男性社員が育児休業を取得等することへの妨害行為など/パタハラ)、アカデミックハラスメント(アカハラ)など、様々なハラスメントが社会問題となっています。

今回は、職場におけるセクシャルハラスメントについて解説いたします。

〇職場におけるセクシャルハラスメントとは

職場におけるセクシャルハラスメント(セクハラ)とは、
①「職場」で行われる
②「労働者」の意に反する
③「性的な言動」
をいいます。

①「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外であっても、当該労働者が業務を遂行する場所(例:取引先の事務所、顧客の自宅など)は「職場」に含まれることになります。

②「労働者」とは、正規・非正規を問わず、事業主が雇用する全ての労働者をいいます。

③「性的言動」とは、性的な内容の発言(性的な事実関係を尋ねることなど)及び性的な行動(性的な関係を強要すること・必要なく身体に触れることなど)を指します。
セクシャルハラスメントの状況は多様であり、「性的言動」の受け止め方にも個人差や男女差があることから、何がセクハラに該当するかの判断が困難な場合もあります。セクハラに該当するか否かの判断に際しては、『具体的な状況に基づき、当該言動が平均的男子あるいは平均的女子が不快と感じるようなものと評価できるか否か』を基準として考えることになります。

〇対価型セクハラと環境型セクハラ

職場におけるセクハラには、
・対価型セクシャルハラスメント
職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの
・環境型セクシャルハラスメント
性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの
があります。

*対価型ハラスメントの例としては、
・事業主が従業員に性的な関係を要求したが拒否されたので当該従業員を解雇した場合
・職場内での性的な言動に対し抗議した従業員を配置転換した場合
・人事考課などを条件に性的な関係を求めた場合
などが挙げられます。
*環境型ハラスメントの例としては、
・職場内で性的な話題をしばしば口にするような場合
・従業員の恋愛経験を執拗に尋ねた場合
・職場において私生活に関する噂などを意図的に流した場合
などが挙げられます。

〇職場におけるセクハラが会社に及ぼす影響

職場におけるセクハラは、会社に対し様々な悪影響(損失)を及ぼします。
直接的には、会社がセクハラ被害者との間で損害賠償責任等(民法709条、715条など)を負うことがあり得ますし、直接の被害者との関係以外でも、職場の内外において以下のような悪影響が発生することが考えられます。

・職場環境の悪化
・従業員のモチベーション低下
→作業効率の悪化、ミスの増加 など
・優秀な人材の流出
・企業倫理感の喪失
・企業イメージの悪化 など

このように、職場内のセクハラが会社に与える悪影響は非常に大きいということを理解する必要があります。

〇会社に求められる対応

雇用機会均等法11条1項は、セクハラが被害者らに及ぼす影響の大きさを踏まえ、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」としています。

さらに、雇用機会均等法11条2項においては、「厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針…を定めるものとする。」とされており、厚生労働省は、当該規定に基づき「事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(セクハラ指針)を定め、必要な措置を具体化しています。

厚労省の定める『セクハラ指針』によると、事業主が講ずべき措置の内容として、以下のようなものが定められています。

①職場におけるセクハラの内容、及びセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること。

②セクハラ行為者に対しては、厳正に対処する旨の方針・対処内容を就業規則等に規定し、労働者に周知・啓発すること。

③予め相談窓口を設置すること。

④相談窓口担当者が、適切かつ広範に対応すること。

⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

⑥被害者に対し、措置を適正に行うこと。

⑦行為者に対し、措置を適正に行うこと。

⑧再発防止に向けた措置を講じること(事実が確認できなかった場合も同様。)。

⑨相談者・行為者等のプライバシー保護のための適切な措置を講じ、周知すること。

⑩相談をしたこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由とする不利益取扱いを禁止する旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

使用者(会社)は、上記10項目を適切に履行していなかった場合、発生したセクハラ被害に対して民事上の責任を問われる可能性が高いと考えられます。
そのため、会社としては、常にセクハラ指針に従った適切な体制の整備・労働者に対する教育等を行うとともに、実際にセクハラ行為が発生してしまった場合にも指針に従い適切な対応を取ることが不可欠となります。

当事務所では、これまでにも顧問先会社等からのご依頼に応じ、各種ハラスメント行為に対する外部相談窓口としての業務や、従業員に対する研修の際の講師、実際にセクハラが発生してしまった場合の調査委員としての業務などをお受けしてきました。
会社として行うべきハラスメント対応につきご不明な点等ございましたら、当事務所にお問合せください。
つくば市、土浦市をはじめ、茨城県及び近隣都県の事案に対応しております。

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