破産法上の免責不許可事由(特に浪費又は賭博その他の射幸行為)について
自己破産の検討にあたっては、免責の可否(免責不許可事由の有無・裁量免責の可能性)について判断をすることが不可欠といえます。実際に、自己破産に関するご相談やご依頼をお受けしていると、免責不許可事由が話題に上がることが少なくありません。
そもそも、「免責不許可事由」とはなんなのでしょうか。
注意しなければならないのは、自己破産を申し立てたからといって,必ず免責許可を受けることができるわけではありません。破産法252条1項各号に規定されているような事由(これを免責不許可事由といいます。)が認められる場合には、免責を受けることができない可能性があります。
破産法252条1項は、免責不許可事由として1号から11号までを列挙していますが、実務上よく問題となる免責不許可事由としては、①不当な財産減少行為(1号)、②偏頗的な非本旨弁済等(3号)、③浪費又は賭博その他の射幸行為(4号)、④詐術を用いた信用取引による財産取得(5号)が挙げられます。
さらに、これらの事由の中でも、私の破産申立代理人・破産管財人としての経験上最も問題になることが多いのが、第4号の浪費又は賭博その他の射幸行為ですので、当該免責不許可事由について解説をさせて頂きたいと思います。
破産法252条1項4号を読むと、
㋐破産者が浪費又は賭博その他の射幸行為をし、
㋑そのために著しく財産を減少させ,又は過大な債務を負担した
場合に、免責不許可事由が存するものと規定されています。
㋐について、「浪費」というのは,『無駄遣い(ショッピングやホスト、キャバクラでの支出など)』のことを指しており、「賭博その他の射幸行為」とは、『競馬・パチンコなどのギャンブルや株・FX取引きなど』のことを指しています。
ここで注意しなければならないのは、例えば「浪費」や「賭博」などをしていた場合がすべて免責不許可事由に該当するというわけではなく、㋑浪費等によって「著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担した」ことが要件とされている点です。すなわち、比較的少額の無駄遣いやギャンブルをした程度では、免責不許事由には該当しないということになります。
それでは、免責不許可事由となる「著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担した」とは、具体的にどの程度のものをいうのでしょうか。
結論から申しますと、この点について明確な基準があるわけではありません。個別の判断、すなわち、一般的な感覚の下で、当該破産者の収入状態・財産状態から見て不相応な支出をしたことによって多額の負債を負い、又は財産の多くを失ったと評価できるような場合をいうことになります。
仮に、破産者に「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担した」といえるような事情が存する場合は、裁量による免責(裁量免責)が許可されない限りは、免責を許可されないことになってしまいます。
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