マンションにおける騒音トラブルについて①
マンションでは、隣接した空間の中で複数の方が生活しています。そのため、それぞれの生活態度や考え方の相違などから、居住者間でトラブルが発生することも珍しくありません。
今回は、マンションにおいて発生するトラブルのうち、『騒音トラブル』について解説させて頂きます。
騒音被害に対して被害者の取り得る法的対抗手段としては、
①不法行為に基づく損害賠償請求
②人格権又は所有権に基づく差止請求
③区分所有法57条に基づく差止請求
などが考えられます。
このうち、①不法行為に基づく損害賠償請求とは、被害者が加害者(騒音を発生させた者など)に対し、騒音によって被った損害(精神的苦痛に対する慰謝料・騒音によって負った心身の不調に対する治療費など)について金銭賠償を求めるものです。
このような損害賠償請求が認められるためには、そもそも当該騒音が違法な権利侵害・法益侵害と認定される必要がありますが(民法709条)、違法な権利侵害・法益侵害に該当するか否かは、どのように判断されるのでしょうか。
他人同士が集団で生活している以上、それぞれが生活音を発生させることは不可避といえます。そうしますと、コミュニティの中で生活する私たちは、隣人の生活音について、一定の程度までは当然に受け入れなければならないというべきです。
そのため、隣人の生活音が違法な権利侵害・法益侵害に該当すると評価されるためには、生活音の程度がこの受け入れるべき程度(受忍限度)を超えたものといえることが必要と考えられています(受忍限度論)。
『受忍限度論』とは、このように、社会生活を営む上で一般通常人ならば当然受忍・我慢すべき限度(受忍限度)を超えた侵害を被ったときに違法な権利侵害・法益侵害と認めるというものです。
問題は、どのような場合に受忍限度を超えたと評価されるかですが、これまでの裁判例を見ますと、
・侵害行為の態様・程度
・被侵害利益の性質・内容
・物件所在地の地域環境
・侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況
・その間に採られた被害の防止に関する措置の有無・内容・効果
などの諸般の事情を総合的に考慮して決するものとされています。
すなわち、騒音が受忍限度を超えているか否かは、事案ごとの事情を踏まえ、個別に判断せざるを得ません。
また、仮に騒音が受忍限度を超えた違法な権利侵害・法益侵害と認められた場合に、具体的にいくらの金銭賠償が認められるかが問題となってきますが、この点についても個々の事案ごとに様々な事情を考慮したうえで決せられることになります。
長くなってしまいましたので、今回はここまでとさせていただきます。
お知らせ一覧へ