従業員が交通事故を起こした場合の会社の対応等について①

2020年6月09日

従業員が不注意によって交通事故を起こし他人に損害を負わせてしまった場合、加害者である従業員本人はもちろん、その雇用主である会社にも損害賠償責任が生じることがあります。

◎会社の損害賠償責任の根拠

従業員が起こした交通事故について雇用主である会社が損害賠償責任を負う根拠としては、
・使用者責任(民法715条)
・運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)
の2つが挙げられます。

〇使用者責任

使用者責任とは、被用者(従業員)が事業の執行について第三者に損害を与えた場合に、使用者(会社)が被用者と連帯して損害賠償責任を負うというものです。
使用者は、被用者の選任及び監督について相当の注意をした場合、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったという場合を除き、当該責任を免れることができません(民法715条1項)。実務上は、使用者が被用者の選任及び監督について相当の注意を払ったこと等を立証することは極めて困難とされています。

〇運行供用者責任

運行供用者責任とは、自動車の運行供用者(自動車の名義人である会社)が、その自動車の運行によって他人の生命又は身体が害された場合、これによって生じた損害を賠償する責任を負うというものです。
会社が運行供用者責任を免れるためには、「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」・「被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと」・「自動車に構造上の欠陥又は昨日の障害がなかったこと」を証明しなければなりません(自動車損害賠償保障法3条)。

ちなみに、自動車損害賠償保障法3条に基づく物損(自動車修理費など)の賠償請求はできません。

◎従業員の交通事故に関し会社が取るべき対応

会社としては、そもそも従業員が交通事故を起こさないように、また、仮に従業員が交通事故を起こしてしまった場合に適切な管理・監督をしていたと評価できるように、可能な限りの予防策を講じておくことが重要となります。

〇社用車の取扱い
裁判例上は、従業員が社用車を運転して交通事故を起こしてしまった場合、会社が責任を免れることは極めて困難とされています。
したがって、予め、社用車の使用をできる限り最小限とするようなルールを設け、運用していく必要があります。

具体的には、以下のような対応が考えられます。
・社用車について社内規程で使用ルールを定め、従業員に周知する。
・社用車の保管・使用について、会社側で適切に管理する。
・社用車の整備を怠らない。
・任意保険に加入する。
・従業員の運転資格、運転技術等について適切に把握しておく。

〇自家用車の取り扱い
自家用車運転中の事故についても、態様によっては会社が使用者責任等を負う可能性があります(例えば、自車通勤を認めている場合における通勤途中の事故など。)。
自家用車については、業務での使用はできる限り禁止するべきです(社内規程などでルールを定め、従業員に周知します。)。また、やむを得ず自家用車の使用を認める場合には、従業員に対し任意保険への加入を義務付けるなどの対応が必要です。

〇従業員に対する教育等
従業員が交通事故の加害者となることがないよう、平素から従業員に対し安全運転に関する教育を行っておきます。
また、従業員に対しては、交通事故を起こしてしまった場合の対応(警察や会社への報告・被害者の救護など)についても、予め十分な指導をしておくことが求められます。

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