企業法務・創業時の組織選択について

2020年5月18日

〇個人事業主と会社(法人)の違い

事業を行う場合、『個人事業主として行っていく方法』と、『会社(法人)を設立して行っていく方法』があります。
一般論にはなりますが、『個人事業主として行う方法』では、例えば会社設立のように定款認証や登記等の手続が不要である(必要な手続としては、税務署への開業届くらいでしょうか。)など、『会社を設立して行う方法』よりも比較的簡易な手続で事業を始めることができるのが特徴です。
他方で、節税策や出資者のリスク回避(後述)、社会的信用の程度といった観点からは、『会社を設立して事業を行う方法』のほうが『個人事業主として事業を行う方法』よりもメリットが大きいといえます。

したがって、将来的にビジネスを拡大していきたいという狙いがある場合には、『会社を設立する方法』を採ったほうが良いということができます。

〇会社の形式

会社法上、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類があります(特例有限会社は除きます。)。これらのうち、合同会社・合資会社・合名会社を「持分会社」といいます(会社法575条1項参照)。
各会社形式にはそれぞれに特徴がありますので、将来のビジョンや出資者の関連性などから適切なものを選択する必要があります。

・出資者の責任の程度、内容
仮に会社が多額の負債を負ってしまったような場合に、出資者個人がどの程度の責任を負うことになるかという点からの特徴です。
株式会社・合同会社は、間接有限責任(出資者は出資額を限度として責任を負うもの)とされています。
これに対し、合名会社では、社員は会社債権者に対し直接連帯して責任を負うことになります(直接無限責任)。
合資会社では、このような無限責任社員のほか、有限責任社員が存在します。
 
・所有と経営の分離の程度
株式会社では、所有と経営が分離しているのが特徴です{出資者は、実際の経営を経営者(プロ)に任せるということになります。}。
そのため、株式会社では、市場から広く出資を募り、大きなビジネスを行っていきたいという場合に適しているということができます。
他方で、株式会社においては、所有と経営が分離している結果、会社の経営にあたっては出資者である株主の意向に拘束されてしまうという特徴もあります。

他方、持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)では、所有と経営が一致しており、社員(出資者)が経営も行うという点が特徴です(会社法590条1項)。
しかし、所有と経営が一致している(分離していない)ことから、株式会社のように市場から広く資金を調達するという方法を取ることができません。

*実際には、特に小規模な株式会社の中には、人的信頼関係を有する株主から構成され、厳密な意味での所有と経営が分離していない場合もあります。

・株式会社と合同会社の比較
前述のとおり、両者は、いずれも間接有限責任を採用しているという点で共通していますが、所有と経営が分離しているか、それとも一致しているかという点に大きな差異があります。

そのほかにも、合同会社においては、株式会社と比較して柔軟な制度設計が可能なこと、比較的簡易な手続により設立が可能であることなども特徴として挙げることができます。そのため、最近は、合同会社の設立を選択する場合が増えているようです。

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