債務整理の方法(会社の場合)

2020年5月17日

債務整理の方法としては、『私的整理(任意整理)』と『法的整理』とに大別することができます。

◎私的整理

私的整理とは、債権者と債務者との間での自主的協議により債務整理を図る手続です。
債権者と債務者との間で合意すれば解決となることから、事案に応じた柔軟な対応・迅速な対応が可能となります。
他方で、あくまでも当事者間の合意を前提とする方法であるため、一部でも合意しない債権者がいた場合、その債権者との間では十分な解決を実現することができないという面があります。

◎法的整理

法的整理とは、裁判所による関与のもとで行われる手続の総称です。清算型と再建型とに分けることができます。
清算型法的整理の代表的なものとしては、破産法に基づく破産手続、会社法に基づく特別清算手続が挙げられます。
再建型法的整理の代表的なものとしては、民事再生法に基づく民事再生手続、会社更生法に基づく会社更生手続があります。

〇破産手続

破産手続とは、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等を清算し、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とした手続です(破産法1条)。
会社について破産手続が開始されると、裁判所によって選任された破産管財人により破産者(会社)の財産の換価処分等がなされ、債権の優先順位に従った弁済・配当が行われます。

最終的に、会社は消滅することになります。

〇特別清算手続

特別清算手続とは、通常の清算手続を行っている株式会社について、「清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある」場合か又は「債務超過の疑いがある」場合に、利害関係人の申立てにより開始される特別な清算手続です(会社法510条・511条)。
破産手続と同様、特別清算手続においても会社の資産を全て処分・清算し、最終的に会社は消滅することになります。

特別清算手続においては、破産手続において裁判所が選任した破産管財人が業務を行うのとは異なり、会社の選任した清算人が裁判所の監督の下で手続を進めることになります(会社法519条1項、523条等)。そのため、両手続では、裁判所による監督の内容や程度に差異が存するほか、特別清算手続においては、破産手続における否認制度などがないという差異が存します。
また、手続の終了に際し破産手続のように債権の優先順位や債権額に応じた配当がなされるということはなく、各債権者との間で個別に弁済方法及び債権放棄に関する和解を行うか(個別和解型)、債権者集会の決議により弁済及び債権放棄に関する協定を行う(協定型)必要があります。

特別清算手続は、株式会社しか利用することができません。

〇民事再生手続

民事再生手続は、経済的に苦境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とした手続です(民事再生法1条)。
破産手続や特別清算手続といった清算型の手続とは異なり、手続開始後も再生債務者が存続し、基本的には引き続き再生債務者による業務執行と財産管理・処分を認めながら、最終的には債務を圧縮し、再生債務者の経済的更生を図るという手続になります。

民事再生手続においては、裁判所及び裁判所から選任された監督委員が手続の進行を監督することになります。

〇会社更生手続

会社更生手続は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係院の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とした手続です(会社更生法1条)。

民事再生と同様に、更生債務者である株式会社の存続を前提として、一定の財産の保有を認めながら債務を圧縮し、再生債務者の経済的更生を図るという手続になります。

会社更生手続は、株式会社しか利用することができません。

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