自己破産・自由財産の拡張

2020年5月10日

自己破産(破産管財事件の場合)には、『自由財産の拡張』という制度が認められています。

〇自由財産とは

破産手続とは、本来、『破産者が破産手続開始決定時において有する一切の財産や、破産手続開始決定前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権について、これらを破産財団として破産管財人が換価・現金化し、債権者に平等に分配する』という手続です(破産法34条1項・2項)。
このように、破産手続は、『債権者に対し破産者の有する財産を法律に従って平等に分配する』というものですが、他方で、『破産者の経済的更生を実現する』という目的を有する手続でもあります。
そのため、破産者の経済的更生のために必要な一定の財産については、破産手続によっても換価処分し得ないものとし、破産者の自由処分が認められる財産(自由財産)としての保有が許されています。

どのような財産が自由財産となるかは、破産法34条3項で定められています。具体的には、以下のようなものです。

・99万円までの金銭(現金)
・金銭以外の差押え禁止財産
  生活に欠くことができない衣服・寝具・家具など
  給料債権(給料から法定控除額を控除した残額の4分の3相当部分)
退職金債権の4分の3
老齢年金を受ける権利 等

〇自由財産の拡張

また、破産法で具体的に定められている財産以外の財産であっても、破産者の経済的更生のために必要と認められる一部の財産については、裁判所の決定によって自由財産として認められることがあります。これを、『自由財産の拡張』といいます。

自由財産の拡張については、破産法34条4項に規定されています。
「裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後1月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。」

このように、破産法34条4項によれば、「破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情」を考慮し、自由財産の拡張が認められることになります。

自由財産の拡張は「破産者の申立てにより又は職権で」なされると規定されていますが、水戸地方裁判所土浦支部の運用では、原則として破産者側から裁判所に対して自由財産拡張の申立てを行い、裁判所が破産管財人の意見を聴いたうえで(破産法34条5項)決定するという流れになっています(実際の運用については、管轄裁判所によって若干の差異があります。)。

なお、実務上は、東京地方裁判所や大阪地方裁判所などにおいて、破産法34条4項の規定により自由財産として拡張が認められる財産が予め類型化されています。水戸地方裁判所土浦支部では、基本的には東京地方裁判所の定めている類型に従って、自由財産拡張の可否を判断しているということができます。
* 東京地方裁判所における自由財産拡張基準については、別の機会に解説させて頂きます。

また、予め類型化されていない財産であっても、その財産が「破産者の経済的更生にとって必要不可欠であること」を証明することができれば、裁判所によって自由財産の拡張が認められる場合があります。

最後になりますが、自由財産の拡張は、いわゆる同時廃止事件ではなく、破産管財事件において問題となる制度です。

自由財産拡張について具体的にお悩みなどがある方は、当事務所で相談対応させて頂きます(事前予約制)ので、ご遠慮なくお問合せください。

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