【借金問題】時効期間経過後、債権者からの要求に従い一部弁済をした債務者について、消滅時効の援用を認容する旨の判決を獲得
相談前
依頼者はつくば市在住の方です。
依頼者は、数十年前に原債権者から借入れをした後、しばらくの間は返済を続けていましたが、完済前に経済的に困窮し、返済をストップしてしまいました。
その後、依頼者が返済をストップしてから10年以上が経過した最近になって、依頼者のもとへ「原債権者から債権譲渡を受けた」とする債権者から請求がありました。依頼者は、債権者から言われるがままに一部返済をしました。
その後、債権者が依頼者に対し、「依頼者は一部弁済(債務の承認)により消滅時効の援用権を喪失した」として残額の支払いを求める民事訴訟を提起したため、当職に当該訴訟への対応をご依頼いただきました。
相談後
当職は、訴訟において、「本件の具体的事情に鑑みれば、債権者には未だ『依頼者が時効を援用しない趣旨で一部弁済をした』との信義則上保護すべき信頼が生じたとはいえないから、依頼者は消滅時効の援用権を失っていない」旨を主張しました。
判決では結論において当職の主張をおおむね認めていただき、依頼者による消滅時効の援用を認め債権者の請求を棄却する旨の判断を示していただきました(確定)。
弁護士からのコメント
本件は、消滅時効経過後の債権について、債権者が後日の時効援用を阻止するために債務者をして一部弁済をさせ、その後に残額の支払いを求める民事訴訟を提起したものです。
確かに、一部返済は形式的には消滅時効の中断事由に該当するため、本件のように時効完成後に一部返済をしてしまった事案ではもはや時効の援用は認められないとも思われます。しかし、本件では債権者がいわば「債務者の無知」を利用して債務者の知らぬ間に時効援用権を失わせたとも評価し得る事案であったため、消滅時効の援用を否定するのは不当ではないかと考えました。そこで、当職にて裁判例を調査した結果、下級審においては本件のような事案において前述したと同様の問題意識から消滅時効の援用を肯定した裁判例が存することが確認できたため、当該裁判例を引用しつつ消滅時効援用の主張を行ったところ、裁判所に当該主張を受け入れていただくことができました。
債権者は控訴せず判決が確定したため、依頼者は支払いを免れることができました。